私がその時そこに居なければその後の人生は変わったものだったでしょうね。

石原
今まで政治をなさっていて、これはスゴい人だと思う方はどなたですか?
今津
やはりまず田中角栄さんです。学生の時に、第二次大戦の撃墜王として有名だった源田実さんのパーティに出て、初めて田中角栄さんの話しをすぐ目の前で聞きましたが、身震いしましたね。中曽根さんや小沢さんにもなかなか近寄り難いオーラがあります。
石原
大きなものを背負って戦い、行動している男には自然とそういう雰囲気が出てきますよね。 私は今日こうやってお話をさせていただいて、やはり今津先生はこの辺では圧倒的な政治家だなあ、と感じています。やはり長年国会議員をなさってこられたという重さがあります。
今津
そうですかねぇ、持ち上げてくれますね。 それにしても人生はいろいろであって私の人生に本当に大きく影響したのは、時の総理大臣海部俊樹先生の『重大な決意』です。これで私はその年の年末の『流行語大賞』をもらっているのですが。
石原
はあ
今津
政治改革法案で日夜明け暮れていた1994年6月のことです。海部首相が衆議院の解散を意味する『重大な決意』をもって閣議に臨む日のことです。 当時の官房副長官の大島理森さんと私は総理に呼ばれて3人で朝ご飯を食べました。私はその日がどういう日か分かっていたので、とても食事をするような心境ではなくて、手をつけなかったのですが…。
石原
はあ…その日の朝…。
今津
海部さんが「よし」と言って立ち、私達はそれを見送りました。 私がその時そこに居なければその後の人生は変わったものだったでしょうね。
石原
はあ…
今津
その朝、海部さんに呼ばれてご飯を食べたということで、私自身も「重大な決意」をしたわけです。 それは自分の将来にも関わることではありましたが、やはり人間としての信義の問題です。
石原
「もしも」があるとして、朝ご飯に呼ばれなかったならばその後はどうだったでしょう。
今津
いやそれはどうだったですかねぇ。ただ、国の将来に関わる重大な決意を一国の総理がするというその最後の時に私が相談を受けた一人で、その時一緒に朝ご飯を食べたというのは、逃れられない私の運命だったのでしょうね。
石原
はあ…はあ~…はあ…。

<第20回>大勢の市民も見物に訪れている中から「じぃ~!」と声が聞こえました。